外国人従業員との労働時間に関するトラブル

外国人従業員であっても、日本において雇用されている以上、労働基準法をはじめとした労働関係法令の適用があるのは日本人従業員の場合と同様です。

そのため、外国人従業員についても、日本人従業員と同様、労働基準法に規定された法定労働時間の範囲内で就業させなければならず、外国人従業員であるからといって特別多くの残業をさせてもよいといったことはありません。

また、残業を命じるためには、労働契約上の根拠と、36協定の締結が必要となるのも、日本人従業員と外国人従業員との間で違いはありません。

そして、日本においては、終身雇用制をはじめとする長期雇用慣行及び厳格な解雇規制を背景として残業が一種の雇用調整機能を有することから、日本人従業員は概して残業に対して抵抗感が少ない傾向にあります。
他方、外国人従業員は、業務は当初予定されていた時間内に終了するのが当然と考え、そもそも残業をすることについて理解がないケースが多く、使用者が残業を命じたところ外国人従業員が残業を拒否するケースは少なくありません。

そのため、外国人従業員に対して残業を当然の義務として命じた場合、思わぬ紛争となるリスクがあります。外国人従業員に残業を命じるに際しては、日本における雇用慣行と、自社における残業についての考え方、業務実態等について丁寧に説明し、理解を得ることが重要となります。

以上の通り、外国人従業員を日本人従業員に比して、特別多く残業させることができるということはありません。

他方、外国人従業員の中には、その在留資格の関係で日本人従業員に比して短い時間しか就業させることができない類型の者がいる点には注意が必要です。
具体的には、「留学」「家族滞在」の在留資格の外国人は、原則的には就労活動を禁止されており、例外的に入国管理局より「資格外活動許可」を得ている場合に限って就労することが可能です。

また、資格外活動許可を受けている外国人であっても、就労することができるのは原則として1週間に28時間以内とされています(「留学」の在留資格者は学校が長期休業期間中の間は1日8時間まで可)。

そのため、これらの在留資格者をアルバイト等で雇用する場合、そもそも資格外活動許可を受けているのか、受けているとしても何時間まで就労可能であるのかを、在留カード及び資格外活動許可書によって確認することが必須です。

仮に、資格外活動許可を受けていない外国人を就労させたり、資格外活動許可の範囲を超えて就労させてしまった場合には、使用者側にも不法就労助長罪として刑事罰が課せられるリスクがあります。

すなわち、外国人従業員については、日本人従業員以上に、労働時間管理・残業命令についても留意するべき点が多いということになります。

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